自分を認める|木村直の「紙パックおばさんのひとりごと」 第4号

投稿者: remanbe

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 先日ある方とお話する機会があり、後になって自分の言いたいように言わせていただいたことに気づきました。本当に久しぶりのことで、とても有難い気がしました。
 
 一つことを話すにも、良いことにしろ、そうでないことにしろ、今の現象につながっている過去の諸々を話そうとしても、気が短い方の場合なぜ無関係な話をするのか…という具合に、十分に話すことができない場合の方が多いのです。
 問題があった場合、今子どもたちに起きていることだけに目が行きがちですが、コトに行き着くまでに過去からの家庭でのあれこれが大きく関わっていることがあります。
 誰にでも「良く思われたい」とか「ほめてもらいたい」などという、いわゆる承認欲求があるものです。家庭の中にあって、自分の存在価値に自信を持てずにいることが、問題行動として現れたりします。

 大人を変えることは難しいですが、子どもには可能性が一杯です。自分を見守る目を感じ取ることに励まされて、頑張ることもあるからです。子どもたちにとって、周りからの温かい励ましや見守りがあることは、良くない方向に向かわずに済む抑止力にもなり得る訳です。

 遊ぶために外で友だちが待っていたりすると、公文で勉強している側の心がそぞろになってしまうので、勉強したくて来た訳ではなくても中に入れます。そして「玄関に入ったらタダでは帰られない、勉強しなければ帰さない!」と、まぁオドシにも近いですが勉強する状態にもって行きます。
 そのような子どもたちを『お付き添い』と称し、誰でも現在の学力をテストで確認しておきます。公文に入会する訳ではなくとも、一緒の場にいることに違和感を感じる必要はなく、次回には各自用の成績表が用意されている…私の教室はそんな感じです。
 そんな1人に「あれ、T!良く来たね。」と二回目に顔を出した彼の名前を言った時の反応を忘れることができません。たった一回の出会いで認識されたことは、その子にとって強烈に大きなことだったのだと思います。家庭内で子どもへの関心が足りず、他の兄弟たちはそれぞれに問題ある状態だったけれど、彼は結局入会して数年にわたって学習しました。心の揺れが大きく、逆らうことも結構ありましたが、今立派な社会人です。
 自分が自分であることを、大事に思い未来に向かって一つでもできることから始めてほしいと私は思っています。公文教室を開設するきっかけも、後ろ向きだった人が自分を認めることができるようになって大変身!そんなご縁をいただいたからでした。
 家庭教師をしてほしい、と友人を通じての依頼でしたが、主婦・母親としての生活だけで迷いがありすぐ返事ができませんでした。いじめの標的になっていた彼は、そのうち強烈ないじめにあって骨折などで二ヶ月近くも入院、ムラムラと義侠心が湧いた私は、ちょうど食堂経営を始めた時期と重なりましたが、日曜日に一時間だけ彼が来る、という形で一年間一緒に数学を勉強しました。
 中三になっていた彼の学力を見ると、プラスマイナスの所でつまずいたことがきっかけでした。「あなたはできるのだから、しっかり授業を聞いていなさい」と言いながら中一のものから始め、自信を取り戻すことができたあたりから、能面のように表情がなかった彼が良い笑顔を見せるようになりました。入試も高得点で突破し、それからは充実した学生生活で現在へとつながっています。

 自信…人間にとって本当に大切だと、私は思います。