長万部のウェブマガジン「リマンベ」は、新連載「WORKS!」をスタートします。
これまで「リマンベの仕事論。」として長万部町出身者にスポットをあて紹介してきましたが、新連載「WORKS!」では、長万部の将来を担うこどもたちに知ってもらいたい方を紹介していきます。長万部のパパ・ママの読者のみなさまにおかれましては、ぜひともFacebookやLINEでこの記事をシェアしていただければ幸いです。
さて、新連載「WORKS!」の初回はなんと海を越えてアメリカから。長万部出身で、現在はアメリカでお弁当のベンチャーを経営する藤井桃子さんをご紹介いたします。長万部小学校についてのリマンベのインスタグラムの投稿をきっかけにつながり、今回のオファーに至りました。
藤井さんは日本で大学を卒業した後に、ソーシャルワークを学びに留学生としてアメリカに訪れたそう。
「最初は英語を話せたら、という目標で来ましたが、気づいたときには英語で意見交換で英語ネイティブの人にひけを取らないようになりたいと、欲がでました。気づけば10年経ち、今に至ります」。
長万部からアメリカへ。そして、長万部の給食のDNAが世界へと広がっていました。
藤井桃子さん プロフィール
藤井桃子
昭和57年5月7日生まれ
さかえ保育所ー長万部小学校ー函館中部高校ー東京農業大学ーUniversity of Texas at Austin を卒業後、ソーシャルワーク関係の仕事、楽天、食品会社を経て現在に至る。
お弁当で起業した理由
サンフランシスコで働いていた頃、ランチに苦労することがあったんです。値段は$12ー15、日本円で1500円くらいのものを30分くらい並んで買っていました。だからか、もう少し手頃で美味しいランチがあればなという思いがとても強かったのもあります。
また、アメリカの和食は値段設定が高めできちんとしたものか、買いやすい値段ではあるけれども完全に和食と違う文化の融合になっているものとに二分化されています。
最初は2013年頃に、プロジェクトとして友人と二人でアプリ作りから始めました。最初のプロジェクトの段階で、「お弁当」をテーマにしたアプリを作りたいとすぐに決まりました。他に迷うことなく、すっと湧き出てきました。
そこから、アプリだけではなくて、実際にお弁当もつくってちゃんとお客様にも食べてもらい、「お弁当を売ること」と「アプリ」の両方をやってみようと始めました。その友人と二人で覚悟を決めて、”ITADAKI”を立ち上げたのが2014年です。
「求めやすい値段での和食を、お弁当で」をコンセプトに、お弁当もWebもアプリも一から手作りしています。
元々の同僚であり友人であった二人で出資をして会社を経営をしています。パートナーはコードを書くエンジニアで、プログラミングに専念してもらえるように、私はエンジニア以外の経営、写真、料理、企画、プロジェクトマネージメントを担当しています。アプリの吟味やお弁当の味見は二人で仲良く行っています。
イチオシのお弁当メニュー
メインの唐揚げや、コロッケなどはもちろん看板メニューですが、サイドメニューも色々考えて作っています。
信太巻き(豆腐を油揚げで巻いたもの)に紅ショウガを入れてみたり、ごぼうサラダを少しレモン風味にしたり、少し彩り、風味を変えて遊んでいます。
あとは、ドレッシング、タルタルソースは母から教えてもらったレシピを採用しています。ごはんは必ず昆布で炊いて、旨味を感じてもらえたらと思ってます。
お仕事でとくに記憶に残っている成功体験と失敗体験
イベントでどこのブースよりも先に完売したときでしょうか。ほかには、あるお客さんが買ってくれた同じ日に、「美味しかったから夕食用に」と二回買いにきてくれたときは、涙が出そうなほどうれしかったです。
ランチを買う場所がたくさんある中でリピーターが増えていくことは本当に幸せなことです。カスタマーへの対応を丁寧にしていると、比例して来ていただくお客様も良い人が多くなると学んできたので、実行していたら本当にいいお客さんがついてきてくれてることも成功の一つです。
失敗は毎日、大なり小なり起きます。最初のうちの大きな失敗は、お客さんの一言一言に反応しすぎてしまっていたことです。例えば、お弁当のことを全く知らない人に、「冷めているならいらないわ!」と他の大勢のお客様の前で言われてしまって困ったことがありました。返し方がわからなかったのですが、常連さんが、気を利かせて 「冷めても美味しいものをお弁当というんだよ、あなたは知らないのかい」と 返してくれて助かりました。
もう一つは、似たようなスタートアップやライバルの出現で、最初のうちはすぐドキリとして取り乱していたのも失敗です。私たちの会社と同じようなアイデアかなとハラハラしている私を、パートナーがドンとした感じで「どうってことないよ」という姿勢で動じずにいてくれたおかげで、今があるのだと思っています。
どちらの場面も、どんなことがあっても過敏に反応するのではなく、「丁寧に自分らしく対応していこう」と思えるようになって、気が楽になりました。人に気持ちよく助けてもらって、どうやって助けてもらったかを覚えておくことで、色々な困難を乗り越えています。
これまで過ごした長万部の生活で、よく思い出すこと
長万部で過ごした記憶は、美味しい食べ物のことばかりです。お料理上手な人が本当に多い町で、貰った煮物、ジンギスカン、子供会のカレーや豚汁、のり巻き、山菜、魚など、長万部で食べたものをよく覚えています。あるときはクラスメートのお父さんがザクロを学校のみんなにと一つ持ってきてくれて、それを物珍しそうにクラスみんなで一粒ずつ大事に食べた記憶もあります。
長万部での思い出は食べ物と一緒になって記憶に残っていますね。
あとは、長万部といえば「給食がおいしい」こと。日本の給食は世界一と言われますが、長万部のはそのなかでも更に飛び抜けていると思います。今でも長万部の友人に給食の献立表を送ってもらって栄養面など参考にしています。
長万部の給食
http://www.town.oshamambe.lg.jp/modules/education/content0008.html
長万部の給食は世界一かもしれません。メニューもローカルの食材でつくった郷土料理が入っていて、本当に世界に誇れる給食です。
私が子供の頃は給食センターがグラウンドの横にあって、友達のお母さんが働いていました。「ザ、顔の見える安心給食」だと思います。そんな長万部の給食センターは、お弁当の会社を営む私たちの目標でもあります。
印象に残っている給食の献立に、「和風サラダ」というイカと野菜をマヨネーズなどで和えたサラダがあります!とても美味しかったのを覚えています。
ひじきの煮物も少しとろみがあってユニークでよくおかわりをしていました。どちらもまだ再現できていないので、レシピをもし知っている人がいたら教えて欲しいです。
これからやり遂げたいこと
注目しているレシピは日本の郷土料理ですね。とくに、地の魚や、野菜を使ったものです。カリフォルニアは日本と気候が似ていますし、漁港も近いので地の物を使って工夫してお弁当に入れていきたいです。日本の郷土料理では、まずは白和えとごま和えを研究したいです。あとはホッケに似ている魚をこちらで是非見つけたいですね。
和食はヘルシーで、こちらでも流行っているのでたくさんの人に食べてもらうということももちろんですが、アメリカでお弁当文化が行き届いていない人たち、貧困層、移民、子供達、お年寄りなどにも、栄養価が高くて低コストで作れるお弁当が少しづつでも浸透するといいなと思っています。
シリコンバレーは競争の地ですので、ウェブ業界にも関わっている以上、競争の波に飲み込まれそうになります。ですが、私たちの会社は「共存」を目標にしているので、自分たちのペースで、フォーカスがぶれない会社に成長させていきたいです。
長万部の学生さんに向けてメッセージ
長万部はエキスパートの宝庫です。色々なエキスパートがすぐ近くにいます。「誰々のお母さんは、イズシ作るのが上手」とか「山菜とりは誰々のお父さんがすごい」とか、今でいうワークショップのようなことが日常的に起こっていました。
なので、誰かが何らかの技術を持っているので、進路でも将来のことでも何か気になることがあるなら聞きにいって欲しいなと思います。
縁というのは不思議なものなので、大切にして欲しいです。例えばですが、「アメリカに住んでみたい」のであれば同じ長万部出身という縁をたどって、私に連絡をするということも素敵だと思ってます。もしかしたらアメリカについて何か良いヒントが得られるかもしれないですしね。
あとは、「行動力」と言うと大きく聞こえてしまいますが、「あのー」と声をかけて人に頼ることの出来る人はチャンスも多い気がします。困ったときには誰かに気持ちよく教えてもらって、いつかは他の誰か困っている人を気持ちよく助けてあげてくださいね。
そして、いつも美味しい給食をつくってくれている給食センターのおばさんに感謝を伝えて欲しいなと思います。世界一の長万部の給食をいっぱい食べてくださいね。